観賞魚水槽におけるバクテリア


皆さまいかがお過ごしでしょうか?
たびたび当ブログでも取り上げていましたバクテリアについての記事、かつて常識とされていた過去の知識から「完全アンモニア酸化菌」についての現在の知識をAIで記事にしてみました。AIがやりがちな推測や造作をできるだけ削除し論文に基づいた情報だけなので見たところでどうということではありませんが知らないよりはマシな程度でご覧ください。実際、時間の経過とともに間違っていた認識は正され過去の情報へとなっているのは確かな話です。この知識をどう解釈し趣味に生かすのかは皆様次第です。

「水槽のろ過バクテリアといえば Nitrosomonas と Nitrobacter」――長年アクアリストに信じられてきたこの常識は、複数の研究によって少しずつ覆されてきました。2015年の「完全アンモニア酸化菌(Comammox)」の発見、さらに2024〜2025年の水槽を対象とした研究がその経緯を示しています。


第一章:長年信じられてきた「常識」

観賞魚を飼育していると、魚の排泄物や食べ残しからアンモニア(NH₃)が発生します。アンモニアは魚にとって猛毒であり、水槽の生物ろ過によって無毒化されます。淡水系では、アンモニアおよび亜硝酸の酸化を担う細菌属は主として Nitrosomonas と Nitrobacter であると長らく想定されてきました。

従来の窒素サイクルの図式はこうでした。

アンモニア(NH₃)
⚠ 猛毒
↓  【アンモニア酸化菌】 Nitrosomonas europaea
亜硝酸(NO₂⁻)
⚠ 有毒
↓  【亜硝酸酸化菌】 Nitrobacter winogradskyi
硝酸(NO₃⁻)
✓ 比較的無害
↓  定期的な水換えにより除去

第二章:Hovanec博士らが示した新たな知見(1996〜2001年)

淡水水槽のアンモニア酸化菌は Nitrosomonas europaea ではなかった(1996年)

1996 — PAPER 01

Comparative Analysis of Nitrifying Bacteria Associated with Freshwater and Marine Aquaria

Hovanec, T.A. & DeLong, E.F. — Applied and Environmental Microbiology, 62(8): 2888–2896
所属:カリフォルニア大学サンタバーバラ校 / Aquaria, Inc.

βプロテオバクテリア亜綱のアンモニア酸化菌とαプロテオバクテリア亜綱の亜硝酸酸化菌を標的とする3種の核酸プローブを開発し、淡水・海水の各種水槽バイオフィルムを解析。海水水槽では Nitrosomonas europaea および近縁種が全サンプルで検出され、全細菌rRNAの最大20%を占めた。一方、淡水水槽ではβプロテオバクテリア亜綱に属するアンモニア酸化菌はわずか2サンプルにしか検出されなかった。また、αプロテオバクテリア亜綱に由来する亜硝酸酸化菌(Nitrobacter 系)のrRNAはいずれの水槽環境からも検出されなかった。得られたデータは、淡水水槽における化学合成独立栄養的なアンモニア酸化が、淡水のニトリフィケーションに関わるとされてきた Nitrosomonas 属およびその近縁種とは別の微生物によって担われていることを示していた。

淡水水槽の亜硝酸酸化菌は Nitrobacter ではなかった(1998年)

1998 — PAPER 02

Nitrospira-Like Bacteria Associated with Nitrite Oxidation in Freshwater Aquaria

Hovanec, T.A., Taylor, L.T., Blakis, A. & DeLong, E.F. — Applied and Environmental Microbiology, 64(1): 258–264
所属:カリフォルニア大学サンタバーバラ校 / Aquaria Inc.

淡水水槽のバイオフィルムのrRNA遺伝子クローンライブラリーおよびDGGEによる解析の結果、αプロテオバクテリア亜綱に属する亜硝酸酸化菌(Nitrobacter 属など)は検出されませんでした。代わりに、Nitrospira 属に近縁な菌の存在が示されました。Nitrospira 様細菌のrRNAはバイオフィルム立ち上げ期に全rRNAの約5%を占め、その出現と亜硝酸酸化の開始が対応していました。Nitrobacter 種を含む市販のバクテリア剤を投入した水槽でも Nitrobacter の増殖・定着は見られず、代わりに Nitrospira 様種の実質的な集団が形成されました。総じて、データは淡水水槽における亜硝酸酸化が Nitrospira moscoviensis および Nitrospira marina に近縁な細菌によって媒介されていることを示唆していました。

淡水水槽のアンモニア酸化菌の同定(2001年)

2001 — PAPER 03

Identification of Bacteria Responsible for Ammonia Oxidation in Freshwater Aquaria

Burrell, P.C., Phalen, C.M. & Hovanec, T.A. — Applied and Environmental Microbiology, 67(12): 5791–5800
所属:The Aquaria Group, Moorpark, California

培養濃縮法と培養非依存的分子生物学的手法を組み合わせた解析の結果、淡水ニトリフィケーション系から得た4つの主要なAOB株が確認されました。それらはNitrosomonas marina クラスター、Nitrosospira クラスター、または Nitrosomonas europaea–Nitrosococcus mobilis クラスターに系統的に関連していました。リアクター内のアンモニア濃度が優占するAOB株を決定しました。Nitrosomonas marina 様AOBを含む濃縮液を新規水槽に投入した場合、アンモニア酸化の確立が最も効率よく促進されました。また、Nitrosomonas marina 様AOBが濃縮液に存在する場合、他のAOBとの混在状態でも、ニトリフィケーション確立後の水槽には Nitrosomonas marina 様AOBのみが残存しました。なお、ニトリフィケーションが十分に確立した水槽においてFISH解析で検出された細胞のうち、Nitrosomonas marina 様AOBは2%以下でした。

これら3つの論文が示した知見:

・ 淡水水槽のアンモニア酸化菌は Nitrosomonas europaea ではなく、Nitrosomonas marina クラスターなど別の菌群

・ 淡水水槽の亜硝酸酸化菌は Nitrobacter ではなく、Nitrospira 近縁種


第三章:完全アンモニア酸化菌(Comammox)の発見(2015年)

ニトリフィケーションは、アンモニアが亜硝酸を経て硝酸へと酸化される過程であり、それぞれ異なる微生物が2段階で触媒すると長らく考えられてきました。しかし2015年、ウィーン大学のDaims博士らのグループと、ラドバウド大学のvan Kessel博士らのグループが独立して、この前提を覆す発見を報告しました。

1種類の微生物がアンモニアから硝酸までの完全な酸化を触媒できる。

これが完全アンモニア酸化菌(Comammox: Complete Ammonia Oxidation)です。Nitrospira 属の一部の系統がアンモニア酸化と亜硝酸酸化の両経路をゲノム上にコードしており、アンモニアから硝酸への酸化中にこれらが同時に活性化されることが示されました(Daims et al., 2015)。

Comammox菌の特性比較

特性 Comammox菌 アンモニア酸化菌(AOB) 亜硝酸酸化菌(NOB)
アンモニア → 亜硝酸 ✔ できる ✔ できる ✘ できない
亜硝酸 → 硝酸 ✔ できる ✘ できない ✔ できる
低アンモニア濃度への適性 非常に高い 中程度 ―

第四章:観賞魚水槽におけるComammox菌の役割――2024〜2025年の研究

淡水水槽バイオフィルターにおけるComammox菌の優占(2024年)

2024 — PAPER 04

Comammox Nitrospira among dominant ammonia oxidizers within aquarium biofilter microbial communities

McKnight, M.M. & Neufeld, J.D. — Applied and Environmental Microbiology, 90(7): e00104-24. DOI: 10.1128/aem.00104-24
所属:ウォータールー大学 生物学科(カナダ)

家庭用・業務用の淡水水槽38本と海水水槽8本のバイオフィルターおよび水サンプルを、16S rRNA遺伝子配列解析とqPCRで解析した研究です。主な知見:

  • Comammox菌の amoA 遺伝子は淡水水槽バイオフィルター38本全てで検出された(平均 2.2×10³ ± 1.5×10³ copies/ng DNA)。30本ではComammox菌が最優占のアンモニア酸化菌だった
  • AOAは35本で検出されたが、最優占だったのは35本中7本のみ
  • AOBは平均 3.2×10¹ ± 1.1×10² copies/ng と低存在量にとどまった(アンモニア濃度が最も高い1水槽を除く)
  • 海水水槽ではComammox菌は検出されず、AOAまたはAOBが優占。塩分濃度に基づくアンモニア酸化菌のニッチ適応が示唆された

本研究の知見は、Comammox Nitrospira が水槽のニトリフィケーションにおいて重要な役割を果たしており、これまで見落とされていたことを示しています(McKnight & Neufeld, 2024)。

家庭用水槽立ち上げ時の微生物群集の遷移(2025年)

2025 — PAPER 05

Microbial community succession of home aquarium biofilters associated with early establishment of comammox Nitrospira

McKnight, M.M., Szabolcs, N., Graham, A. & Neufeld, J.D. — ISME Communications, 5(1): ycaf212. DOI: 10.1093/ismeco/ycaf212
所属:ウォータールー大学 生物学科(カナダ)

家庭用水槽3本を新規立ち上げから12週間にわたって追跡した研究です。水槽水、バイオフィルタービーズ、スポンジフィルターを毎週サンプリングし、16S rRNA遺伝子配列解析・qPCR・メタゲノム解析でアンモニア酸化菌の遷移を調べました。主な知見:

  • アンモニア・亜硝酸が検出限界以下になるまでの期間は水槽によって異なり、2本は3週目、1本は8週目に達成された
  • アンモニア酸化菌のqPCRによる検出はアンモニア酸化の開始と対応しており、AOAはバイオフィルタービーズに優先的に定着する傾向が見られた
  • 12週目のメタゲノム解析により、全水槽でAOAおよびComammox菌の amoA 遺伝子と、ComammoxおよびNitrospira亜硝酸酸化菌の nxrB 遺伝子が確認された

対象水槽が3本と少なく、今後さらなる研究が必要とされています。


参考文献

  1. Hovanec, T.A. & DeLong, E.F. (1996). Comparative Analysis of Nitrifying Bacteria Associated with Freshwater and Marine Aquaria. Applied and Environmental Microbiology, 62(8): 2888–2896. DOI: 10.1128/aem.62.8.2888-2896.1996
  2. Hovanec, T.A., Taylor, L.T., Blakis, A. & DeLong, E.F. (1998). Nitrospira-Like Bacteria Associated with Nitrite Oxidation in Freshwater Aquaria. Applied and Environmental Microbiology, 64(1): 258–264. DOI: 10.1128/aem.64.1.258-264.1998
  3. Burrell, P.C., Phalen, C.M. & Hovanec, T.A. (2001). Identification of Bacteria Responsible for Ammonia Oxidation in Freshwater Aquaria. Applied and Environmental Microbiology, 67(12): 5791–5800. DOI: 10.1128/AEM.67.12.5791-5800.2001
  4. Daims, H., Lebedeva, E.V., Pjevac, P. et al. (2015). Complete nitrification by Nitrospira bacteria. Nature, 528(7583): 504–509. DOI: 10.1038/nature16461
  5. van Kessel, M.A.H.J., Speth, D.R., Albertsen, M. et al. (2015). Complete nitrification by a single microorganism. Nature, 528(7583): 555–559. DOI: 10.1038/nature16459
  6. McKnight, M.M. & Neufeld, J.D. (2024). Comammox Nitrospira among dominant ammonia oxidizers within aquarium biofilter microbial communities. Applied and Environmental Microbiology, 90(7): e00104-24. DOI: 10.1128/aem.00104-24
  7. McKnight, M.M., Szabolcs, N., Graham, A. & Neufeld, J.D. (2025). Microbial community succession of home aquarium biofilters associated with early establishment of comammox Nitrospira. ISME Communications, 5(1): ycaf212. DOI: 10.1093/ismeco/ycaf212

本記事は各論文の原文(abstract・本文)を直接確認した内容に基づいて作成されています。