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《 ビーシュリンプの飼育 》
1.)◆飼育に必要な物
2.)◆セッティング
3.)◆水作りについて
4.)◆飼育環境
5.)◆エサについて
6.)◆性別判断
7.)◆水換え・繁殖を考える
8.)◆グレードアップ・選別について
9.)◆死ぬ原因について

◆飼育に必要な物◆
●ビーシュリンプの飼育をする際、まず揃えなければいけない物がいくつかあります。
①水槽
扱いやすいのは45cm水槽、場所に余裕があるようであれば90cm規格水槽等、水量が多いほど長期維持が可能となります。選別をメインにお考えなら、60cm水槽を数本用意されたほうが効率的です。



②底砂
ソイルが非常に安定して繁殖を望めます。大磯・川砂でも飼育可能ですが、繁殖を目指すなら弱酸性を作り出すのに容易なソイルがお勧めです。アルカリに近い水質ではアンモニアなどの毒性が増す傾向があります。弱酸性を維持できることや、ソイルに含まれるフミン質などによりビーシュリンプにとって良い環境が出来上がります。又、赤玉土などを原料として含むソイルはモンモリ・ゼオライトなど足元にも及ばない浄化作用があります。ソイルを使用するにあたり何点か気をつける点があります。一度設置したソイルは水槽内で同じ水質を維持し続ける訳では無く、ある程度成分が抜けてしまうと酸性が強くなったり、様々に水質が不安定となります。目安として半年~1年ほど経過あたりからリセットする事を視野に入れ新たなソイルを用意した方が良いでしょう。やろうと思えばいくらでも長期維持は可能です。しかし、慢性的な低pH・高い硝酸塩値などが続くと繁殖に支障をきたします。


③ろ過機
水槽の水量に合わせた外部ろ過機・給水側取り付けスポンジ(稚エビ吸い込み防止)・エアリフトスポンジフィルターの併用する事でより安心が増します。pHが中々下がらない地域の方は底面フィルターを使用すると良いでしょう。ただし、底面に使用できるソイルは限定されますので、底面フィルターに使用可能なソイルを選ぶ必要があります。


④エアーポンプ・ヒーター・水温計
エアリフトスポンジフィルターは1水槽に対して1つ、120cm水槽で2本使用される事をオススメします。物理・生物ろ過共に非常に役に立ち、水面へ吐き出す事により酸素供給に有効な水面面積を増やせます。スポンジフィルター一つに対し強めのエアーポンプ1台を使用するくらいが丁度良いかと思います。水槽数台を維持するようなら浄化槽用のブロワを使用した方が効率的です。
ヒーターはサーモスタットと独立の物を使用された方が良いでしょう。どちらが故障しても取替えが利きます。水量に合わせて余裕のあるヒーターを用意します。
水温計はアナログ・デジタル(最高・最低水温記憶型)の2種類設置する事で上部・下部の温度差、昼・夜の温度差を知る事ができます。中には狂った水温計もあります。ここで失敗しない為にも購入時に温度を確認してください。


⑤レイアウト(水草・流木・石など)
何も入っていない状態では見た目も悪いですし、生存率にも影響してきます。できるだけ足場となる水草や流木など入れるようにした方が良いかと思います。ウィステリアなどのハイグロ系はカットすると毒が出ると言われています。私が使用した際は特に問題ありませんでしたが、良くないと言われる物は避けた方が無難です。私が使用している水草は「ヴァリスネリア」「ミリオフィラム・マッドグロッセンセグリーン」「アマゾンソード」「ウィローモス」です。特にウィローモスは足場として欠かす事が出来ない水草です。そのウィローモスを活着させるために流木や石などが使用されます。流木は十分水に漬け込み灰汁抜きをした上でご使用ください。中には煮沸できない流木もありますので購入前に確認しましょう。石は出来るだけ水質に影響を与えにくい物を選びましょう。私は溶岩石を適量使用しています。


⑥照明
水槽用の蛍光灯で最低2灯式、もしくはそれ以上が良いでしょう。蛍光灯の波長により水草・コケの成長に影響を与えますので、水草に適した蛍光灯を使用される事をオススメします。購入前にお店でご確認ください。光もある程度体色・成長に影響します。水草が元気に育つ程度は確保しましょう。



◆セッティング◆
①水槽の設置
水槽に水を入れると相当な重量となります。予め設置場所、水槽台など強度のある場所へ設置しましょう。


②底砂を入れる
水槽の設置が済んだらまずはソイル等の底砂を入れます。入れる量は水草や水質を考え増減されます。一般的に5cm~6cm程と考え、水草を植える場所は厚めに敷きます。底砂は後景に行くにしたがって厚めに敷きます。これは水草植栽・見栄えの事を考えての事ですので、ご自由に調整ください。


③器具類の設置
底砂を敷き終わったら器具類の設置です。温度計・外部フィルターの設置・エアリフトスポンジフィルターの設置・ヒーターを設置します。この時器具類の電源は絶対に入れないでください。最近のヒーターは安全対策の為、水から上げる(空焚き)とショートし壊れるようになっているものがあります。設置する場合は十分注意し、必ず水に水没した状態で電源を入れましょう。又、ヒーターは縦に設置せず、横にして水槽ガラス面中層より若干下に設置します。温度感知部分はヒーターから離れた下層より若干上に設置します。暖められた水が全体へ広がるよう外部ろ過の排水を調整しましょう。水温計の設置場所ですが、ビーシュリンプはほとんど下層付近にいます。その為、下層より少々上へ設置する方が良いでしょう。できる事ならアナログ式とデジタル式(最高温度・最低温度を測れるタイプ)の2種類を使用した方が確実です。アナログは中層・デジタルは下層へ設置し、温度差が見られるようであればヒーターの位置や排水を調整します。
器具類の設置が終わったら水槽へ水を入れます。ソイルが入っていた袋やゴミ袋などの大きめの物をソイルの上に敷き、ソイルが巻き上がらないよう静かに注水します。水が半分まで入ったところで水草・流木・石などを設置しても構いません。自分の腕・流木・石を入れる分を考え水を入れます。設置当初のソイルは灰汁が出やすいので面倒でなければ半分ほど水を換えると良いでしょう。
入れる水は予め25℃~27℃くらいに水温調整した水を入れます。


④外部フィルターの呼び水・ろ材
外部フィルターを初めてご使用になる場合中々うまくいかない事があります。説明書通り設置しましょう。給水側のホース内へ水が入った状態でバルブを閉め、外部フィルター本体へ水を張りセットすると比較的楽にスタートできます。
ろ材もまた非常に大事な部分です。主にリングろ材が中心となりますが、リングろ材は非常に収まりが良く、ついつい詰め過ぎる傾向があります。ろ過機内はスムーズに水が流れるよう通水性を確保する必要があるのです。特に外部ろ過が成す役割は物理的なろ過より生物ろ過に期待できる為です。単にろ材が多ければ効果的なわけではなく、ある程度通水性を確保する事により、よりバクテリアにとって良い環境が望めます。


全て設置し終わったら木屑などのゴミを取り除き、水槽内ガラス面を軽く拭くとキレイになります。
最後に器具類の電源を入れ、それぞれ作動しているか確認し、異常が無ければ完了です。


◆水作りについて◆
設置当初の状態ではまだ水が出来上がっていません。水が出来上がる状態とは「生物ろ過」のサイクルができている状態を言います。ろ過には物理的なゴミを削減する物と、バクテリアなどによる微生物に分解してもらうろ過があります。後者である生物ろ過は非常に大事な部分であり欠かすことができません。
立ち上げ当初はそれらのバクテリが少ない状態であるため、まずはこれを増殖させなければなりません。


~好気性細菌~
●ニトロソモナス属
●ニトロスピラ属
これらの好気性細菌によりアンモニア→亜硝酸→硝酸塩と硝化されます。
日本においてニトロスピラは大手飲料メーカーにて研究が進められているようで、これらの菌は浮遊して活動するのではなく、ガラス面やろ材などあらゆる物に付着して活動します。しかし、100%浮遊菌が活動していないという訳ではありません。付着はしなくても菌同士でコロニーを作り活動することもあります。これらバクテリアは一種だけが活動しているわけではなく、様々な菌種が活動する事により結果が得られます。
 ニトロソモナス属が担っていたのは一部で本来大きな役割を果たしていたのはニトロスピラ属である事が分かってきました。近年では完全硝化細菌と言われる完全アンモニア酸化細菌(アンモニアから硝酸を生成する)comammoxより単離されたニトロスピラ・イノピナタが知られており、以前の二段階硝化とは概念もすでに変わっています。又、ニトロバクターは水槽内ではほぼ活動していない事が分かっています。それらについて長年否定されてきましたが下水処理での知識から我々日本人はやたらと信頼を寄せており、未だにそれら数十年前の情報を元にした商品化がされています。インターネットでは様々な情報が行き交っていますが、個人での見解は真に受けず、論文や特許などの確かな情報を見たほうが良いでしょう。


 これらバクテリアは字のごとく酸素を非常に好むため、立ち上げ当初よりエアレーションは多めに行います。と言っても、酸素は主に水面より供給される為エアーポンプからのエアーと、外部フィルター排水を水面付近に吐き出し、波により水面面積を増やします。※水と酸素が触れ合う面積を増やす事が重要です。ヒーターは26℃に設定します。※30℃が活発となりますが、これ以上の温度はパイロットの生物に影響を与えるためです。
 パイロットと言われる生物を投入します。エビの水はエビで作るのが良いでしょう。私の場合はレッドビーシュリンプを数十匹入れて水作りをします。魚類などでも構わないのですが、様々な雑菌などの持込も考えられますので、必ず状態の良い生体を使用された方が良いでしょう。特にカビなどの持込は甲殻類にダメージを与えます。病気を持っているかもしれない魚を使うのはリスクが伴います。
状態によりかなり上下しますが、2週間~1ヶ月くらいで数値に変化が見られます。アンモニア濃度が減り始め、亜硝酸が検出されやがて硝酸塩が出始めます。この頃よりアルカリ分を消費しながら水が出来上がる第一歩目となります。※pH8が活発に活動します。低pHでは時間を要します。
 これらのバクテリアが硝化作業をする際、酸素を大量に消費します。その為エアレーションが非常に重要となります。できるだけ酸素と水が触れ合う面積を増やす事が重要です。
 これら好気性細菌が働きすぎると時として白濁を起こす場合があります。しかしうまく回っている証拠ですので、しばらく様子を見て少量水換えを行うと良いでしょう。この時数値を気にしてむやみやたらと水換えをするのは効率的とは言えません。pH6.5を下回らないよう水換えを必要最低限行います。
 アンモニアはpHが低いほどアンモニウムイオンとして存在し比較的毒性が低いと言われます。その為、ソイルで作り上げられる低pHは生体にとってもリスクが低く抑えられます。


~嫌気性細菌・通性嫌気性細菌・通性好気性細菌~
これら市販されている物の菌がどれほどの働きをしているか難しいところではありますが所謂「脱窒」と言われる働きをする脱窒菌、これは数が限られ水槽に入れなければ自然には増えにくいようです。これらの菌は酸素を嫌うものもあり意図的に増殖させるのは難しいのかもしれません。しかし、一度安定すると非常に水槽維持が楽となります。これらの菌類には決して良い働きをする菌ばかりではなく、良くない働きをするものが多数あります。あらゆる病原菌を増殖させ生体にとって致死量となる物質を作り出すものもいます。これらの添加剤も数多く売られていますが、確かな物は限られているようです。私も過去にこれら添加剤にて熱帯魚を殺してしまった苦い経験があります。使用される際は、専門店より確かな物を選んでください。
(脱窒とは)
脱窒は硝酸あるいは亜硝酸が酸素の代わりに呼吸のために電子受容体として利用され, 一酸化窒素, 一酸化二窒素(亜酸化窒素),分子状窒素へと還元される嫌気的な過程であり, 細菌および糸状菌を含む広範囲の通性嫌気性微生物(脱窒菌) により行われる。
この分野はまだまだ解明されていない様々な菌類がいます。決して生半可に言い切れる分野ではありません。常日頃定説が定説ではなくなっています。ある程度の知識と受けとめお考えください。


 新たなレッドビーシュリンプを水槽へ投入する際は、温度合わせ・水合わせを行います。購入してきた水と投入する水槽水があまりに違いすぎるとショック死を起こす場合があります。必ず水合わせ作業をゆっくり行いリスクを避けましょう。水合わせ方法は当ホームページのメニュー『Drip kit~ドリップキット』にて解説してありますのでご覧ください。


◆飼育環境◆
 水が出来上がれば適切な水温へ調整します。レッドビーシュリンプに適した数値を挙げるのは非常に難しいので、私の経験上の目標値を記載します。


適応水温:12℃前後~27℃注)私が実際経験した水温ですが、低すぎ高すぎでは明らかに元気がありません。特に夏場の高温時は可能な限り下げる努力をしましょう。
22℃~25℃
pH:5.8~6.5
GH:2~5
TDS:特にナシ 
照明:1日7時間~10時間くらい


特にpHについては意見が様々でしょう。ソイルを使用すると酸性に傾きやすく歯止めが掛けづらいのが欠点でもあります。あまりに下がるようであれば、水換え・添加剤での調整など考える必要があるでしょう。ソイルは全般的に酸性へ傾きます。
炭酸カルシウムなどを使用して上げる場合は、当社製品「ドリップキット」を使用します。突然投入するとアルカリが強すぎpHショックを起こし、最悪の場合死に至ります。添加される場合はカルシウムを水で溶き水合わせキットを使用して点滴方式でゆっくりされると良いでしょう。
GH(総硬度)についても意見は様々です。私は以前GH12を経験しましたが、特に問題はありませんでした。しかし、なんでも適度が良いのは確かです。甲殻類は脱皮の際水の補給をします。その際にミネラル分も一緒に吸収します。しかし、甲殻類は体内にミネラル分を蓄える術を持ち合わせ、脱皮の際利用されます。その為、与えるエサがきちんとしていればさほど重要視する必要はないでしょう。見るとしたらGHよりKHの数値を注意し管理された方が良いかもしれません。※アクアリウム界でのKHは緩衝能力値を見るKHです。試薬選びは前もって調べて購入しましょう。
温度は23℃前後を目安とし、硝酸塩値・リン酸塩・pHの動向を見てソイルの交換・水換えを行うと良いでしょう。


◆シュリンプの飼育は難しいと言われているようですが、決して難しく考える必要はありません。一度のセッティングで長期維持しようとするから難しいのです。確かに一度セットしたものをやり直すのは大変面倒な作業ですが、ソイルは同じ水質を維持し続けるわけではありません。一度セットしても良い時期もあれば悪い時もありと波があります。要するに、悪くなる限界時期を見計らってセットのし直しをするべきだと考えます。生体の調子を完全に崩す前に、新たな環境を作ってあげるのです。見極めは難しいかもしれませんが、良く観察し、じっとして動かない・エサ食いが悪い・少しずつ死んでいくなど前兆が見られたら即行動に移すべきでしょう。
ビーシュリンプの飼育は、間違った事をしなければ比較的簡単に増えてくれます。それが人気のある要因でもあります。
飼育方法は決して一つではありません。飼育環境は人それぞれ、又、エビそれぞれです。ご自分のシュリンプに合わせ最も適した環境を模索ください。


◆エサについて◆
●一般的に与えられている物
冷凍赤虫・冷凍コペポーダ・冷凍ブラインシュリンプ・クロレラ・スピルリナ・人口飼料などあげるとキリがありません。雑食性で何でも食べてしまいます。ただし、与えて良い物と良くない物がありますので注意しましょう。まず、甲殻類にとって有効な物を挙げていきます。


無農薬ほうれん草:
かなりやわらかめに茹でて与えないと中々食べられません。たっぷりの水で茹で、茹で終わったら流水で十分流します。ほうれん草にはシュウ酸が含まれ決して良い成分ではありません。しかし茹でる事で7割~8割くらいは抜けるそうなのでさほど問題ではないでしょう。


カロテン類:
クロレラやスピルリナなどに多く含まれています。これらを摂取し、様々な過程を経てアスタキサンチンなどへ変換し体色へ影響を与えます。特にゼアキサンチンは直に吸収され余分な分が蓄積され発色が落ちます。与えすぎには注意が必要です。


リン脂質:
卵巣・卵を作る為に必要な成分です。エネルギーとしても活用される為十分摂らせる必要があります。


不飽和脂肪酸:
DHAなどあらゆる脂肪酸はエネルギーであり、あらゆるストレスを軽減するだけではなく、卵巣を成熟させるために効果的と言われています。当社製品「日の丸弁当」にも含まれますが、コペポーダなども与えると効果的と言えるでしょう。


ビタミンC:
あらゆるストレスからの耐性・特に高温耐性に対して効果があると言われています。水棲生物である甲殻類が水溶性ビタミンであるビタミンCを摂取するのが困難であり、仮に飼料へ添加しても熱処理を行う際90%以上は消失してしまいます。又、飼料内へ残ったビタミンCも1ヶ月持たずに時間とともに消失してしまいます。その為より摂取しやすい安定型ビタミンCが効果的です。この手の生物はこういったものを分解する酵素を持ち合わせていると考えられています。様々な甲殻類において、幼少期の生存率を上げるのに効果的と言われています。


コレステロール:
コレステロールを摂取する事により脱皮ホルモンだけではなく様々なホルモンの分泌に関わっているとされています。生きていく為に必要な成分であると言えるでしょう。


各種ミネラル:
カルシウム・リンなどのミネラル分は甲殻類にとって非常に重要な成分です。外界から身を守る為に有効に使われます。脱皮の際一時的にクチクラに含まれる色素・カルシウムなどのミネラル分を体内へ保存し、脱皮完了後また戻すと言われています。脱皮についてはまだまだ解明されていない部分もあり確かな事は言えませんが、ミネラル分については非常に大事であると言えます。ただし、脱皮は成長と共にあるものでミネラルだけ与えたところで脱皮不全は防げません。


これらを含むエサとなる物を与えると効果的でしょう。あらゆる物がありますので、ご自分で開拓されるのも面白いかもしれません。


●逆に与えて良くない物もあります。
糖類:
単糖類(ブドウ糖等)は甲殻類にとってストレスとなります。エネルギー代謝が非常に効果的過ぎるため逆効果となると考えられているようです。継続的に与えると成長に害を与える事となります。逆に多糖類(でんぷん・セルロース等)は甲殻類にとって有意義に使われますが、同じ多糖類であるキトサンは成長阻害が見られる場合もありあえて与える必要性は見受けられません。グアガムは脱皮不全を引き起こす可能性がありますので避けましょう。
これらを多く含む物は与えないように事前に下調べしましょう。何でもそうですが、与えすぎ・偏りはどんな生物にも良くないのは確かです。

◆性別判断◆

●繁殖を行う際どうしてもオス・メスの判断はつき物です。せっかく購入したはいいが、全てオスだったでは増えるものも増えません。
特にオークションなどで購入する際はほとんどがオスであったと言う事が多々あります。画像をじっくり見て、もしくは水槽をじっくり見て判断し購入しましょう。

◆実際にオス・メスの画像を載せましたのでご覧ください。まず左側がオスです。オスはメスに比べ頭部がするどくとがったような形をし、胴体も薄く全体的にスマートな印象を受けます。髭が長いのも特徴ですが、かなり個体差があります。

 
◆右画像がメスです。オスとは逆に頭部が丸みを帯びて胴部分に厚みがあり、全体的に丸みを帯びた感じです。卵を抱える為に腹部分が広がっています。抱卵間近となると頭部後の内部が大きく黒ずみ判断が容易となります。
白黒ビーシュリンプについても同じような判断ができます。しかし、白エビと言われる全体が真っ白なエビを交配させたビーシュリンプは頭部が丸っこく見えるため頭部のみで判断せず腹部分・全体を見て判断しましょう。

◆ある程度数をこなすと自然と分かるようになりますが、中にはどうしても判断がつきにくいエビも生まれてきます。

◆水換え・繁殖を考える◆
●水換えについて
一般的にアクアリウムの世界では1週間に1回~水換えしましょうと言われています。しかし、定期的と決めて行うのではなく、数値や状態を見て判断された方が良いでしょう。水換えは蓄積された硝酸塩・リン酸塩を取り除く為・炭酸塩硬度(KH)調整・pHの調整など様々な理由にて行われます。主に硝酸塩を減らす事で行われますが、脱膣により蓄積され続けない水槽もでてきます。そういう水槽は調子さえ良ければ頻繁に水換えを行う必要性に欠け、足し水だけでも可能な場合もあります。
水槽は同じ条件で立ち上げても同じ結果になってくれる保障はありません。不思議と何かしら違うのが当たり前なのです。その為水槽により水換え頻度は変わります。目安とする数値はそれぞれ考え方がありますので難しいところですがあまり多くなるとコケもひどくなりますのでその際は水換えを行います。一度に多く取り替えるのではなく、水槽に合わせて数Lずつこまめに水換えすると良いでしょう。例えば、60cm水槽なら一度に1~2Lを数日間数値に変化があるまで行うなど、面倒ではありますが少量ずつ行う方法もあります。
私の水槽で例を挙げると、60×45×45cm水槽があります。ろ過は外部ろ過1台・テトラブリラントフィルター1本・照明は蛍光灯2灯・底砂ソイル、コケも生えず硝酸塩値が上がりません。状態も良いので足し水するくらいであえて手は加えません。それとは打って変わって120cm水槽、外部ろ過1台・テトラダブルブリラント2本こちらは硝酸塩も普通に上がるので1度に7~8Lほど数日水換えを行います。
このように、状態を見て換えた方が効率的と考えます。その為には数値を計る器具・試薬をある程度揃えておく必要があるでしょう。
主に使用するのはpHです。頻繁に計るならデジタルpH計が便利です。しかし、電極部分のメンテナンスを怠ると使い物にならなくなってします。それを考えると液体系の試薬が確かです。pH計にも様々種類がありその値段もピンキリです。安価な物はそれなりの物でしかありません。3000円の物と30000円の物があるのには理由があるのです。
pHが下がりすぎるようであればGH・KHの調整も必要となります。同じソイルを使用しても地域によりpHは全く異なります。比較的東北地方はpHが下がりすぎる傾向があるようなので、ソイルにこだわる必要も無いのかもしれません。地域の水により水質は変わりますので一概にこのソイルが良いなど言えるものではありません。それぞれ試行錯誤でご自分の地域に合うソイルや組み合わせを見つける事をオススメします。


●もう一つの水換え
もう一つ水換えについてお話します。それは、生エサを使用する頻度です。生エサは非常に効果的ですが、水を汚しやすいのが欠点でもあります。冷凍エサを使用する際は水洗いし、解凍して与えますが、水分(体液)を含む為に水の劣化スピードが早くなります。その為、水質の変化にあらゆる対応が利く玄人には良いですが、見極めが難しい方は水を汚しにくい人口飼料をオススメします。


●繁殖について
当たり前の事ですが、メス・オスが揃わないと繁殖はしません。繁殖を目指すなら45cm水槽で最低20匹くらいから始められるのが良いと思います。比率は♂4:♀6くらいが良いかと思います。繁殖する際いわゆる「抱卵の舞」と言われる行動があります。これはメスが抱卵前に何かしらを分泌し、それを嗅ぎつけたオスが狂ったようにメスを探し泳ぎ回る様から名づけられたようです。
抱卵前には目視できる前兆が見られます。メスの頭部内がどす黒くなりその面積が増えてパンパンの状態になります。そういう状態のメスエビが見られたら抱卵が近づいたと考えて良いでしょう。普段はなにもしなくても抱卵しますが、中々抱卵してくれない時はそれに合わせ若干水換えを行います。これはpH・GHなどの水質的なショックを与え抱卵を促します。又、抱卵を容易にする為栄養面でも考えるべきでしょう。エサについてでも書きましたが、リン脂質・不飽和脂肪酸を含む飼料を与えるのも重要です。
水槽内へ何かしらを添加して抱卵を促進するのは簡単な事ではありません。残念ながら水槽内へ入れたもの全てが体内に入る訳ではないのです。大概はpHショックなど間接的な物に過ぎません。抱卵を促進させる為には体内よりそれらの有効成分を摂らせる必要性があり、残念ながら簡単にできるものではありません。
繁殖を行う際気をつける点があります。彼らは彼らなりに考えて繁殖しているようで、ある程度数が増えてくると繁殖行動に陰りが見られてきます。そして、一度抱卵が止まってしまうと次の抱卵までかなりの時間を要します。こうなってしまうと水を換えようが何かしら添加しようが何を行っても無駄な努力、時間を費やし様子を見るしかありません。過密飼育は避け、常に余裕のあるスペースで飼育した方が良いでしょう。
うまく受精された場合、水温にもよりますが20日~24日前後で孵化します。孵化後1~2週間程度で十分目視できるサイズとなります。うまく受精できなかった場合は早い段階で脱卵します。又、脱皮の殻に卵が付着している場合もありますが、孵化寸前の場合孵化する場合もありますがカビが生える前に取り除きましょう。



◆グレードアップ・選別について◆
よくこのような質問を受けます。「今飼っているエビのグレードを上げたいがどうしたら良いのか?」確かにカルシウムなどで若干白色が上がりますが、根本的な部分はなんら変わりありません。足の遅い馬から早い馬が生まれるのはごくまれな事と同じように、現在出回っている綺麗なエビは地道な選別・交配を繰り返したブリーダーの努力の結晶なのです。早い段階でグレードアップしたいのであれば、それなりの血を入れる方が話は早いでしょう。単純に添加剤などでグレードを上げる事は難しい話です。
私も普通バンドから日の丸が生まれた経験があります。しかし、よほどの確立でしか生まれない為にこの作業は非常に気が遠くなる作業ですし、かなりのスペースが必要となります。
選別をするにはまず水槽を最低2~3本用意します。そしてある程度綺麗なエビを購入し繁殖させます。生まれた色の薄い個体は抜き取り別水槽へ移動します。非常に単純な作業ですが、根気よくこの作業を行いグレードの維持・upを行います。その際選別を曖昧にするか、厳しい目で選別するかで差が出てきます。一度選別し、色抜けした個体が水槽を移動する事で色が戻る場合があります。しかし選別水槽には戻さないようにしましょう。比較的pHが上がりすぎたり、下がりすぎた水質では色抜けする個体がいます。しかし、そのような環境でも色抜けしない個体がいます。このような個体を選別水槽へ集め飼育するのも一つの手です。
一番重要な部分が非常に簡単な説明で終わってしまいますが、これがビーシュリンプ飼育(ブリーディング)の一番の醍醐味です。難しく考えず、常に状態が良いエビを選別し、良い血統を入れ、グレードアップできた時の喜びは格別です。
これからは柄ではなく、色・質・個性の時代です。皆さんがそれぞれ追い求める形は様々あり、決して一つではありません。是非自分流のエビを確立してみてはいかがでしょう?

◆死ぬ原因について◆
これについては皆さんも悩まれた事があるかと思います。そう言う私自身も悩む事がしばしばあります。症状は様々ですが、一番良く見かけるのはポツリ・ポツリと徐々に死亡していく様です。いったい何が原因なのか?色々と原因を突き詰めていくと何かしら思い当たる節がでてくるかもしれませんので、参考として記載しておきます。参考程度でお読みください。


『ポツリ・ポツリ死んでゆく・・・』
エビは免疫力に非常に乏しく、時として突然死を起します。親より引き継ぎ、稚エビほど免疫力が強く、時間を追うごとに免疫力は下がります。突然の大量死などが起きた場合、感染症や寄生虫などが考えられます。出来るだけ細菌類を持ち込まない・繁殖させない水質管理を心がけます。本来pHも中性に近い方がエビにとって良いのかもしれません。しかし、それら細菌類から守るという意味で酸性よりの水質が良いのかもしれません。水槽という狭い環境の中で、いかにエビに死を与えない水質を維持できるか?試行錯誤一番良い方法を模索ください。


●とあるソイルを使用した際、初期のアンモニアが非常に高く測定不能なくらいの色を示します。そこへパイロットとしてレッドビーを数十匹投入していますが、一度も死んだ事がありません。亜硝酸が出始めても特に気になる様子も見られずどちらかと言うと元気な状態が見られます。実はこれらが原因で死なせたと確実に言える経験に乏しいのが正直な所です。立ち上げの状態がたまたま良いのか、それとも単にこれらに対して抵抗力があるのか?確かに水作りは大切です。良い状態では抱卵もエサ食いも非常によく元気でいる事が伺えます。私の見解は低pHでのアンモニアはさほど害とはならない、亜硝酸の滞在時間は非常に短く大したダメージを受けないと考えます。バクテリアの中には善玉と言われるものと、悪玉と言われる病原菌を作り出すものがいます。これらが水質の状況によりバランスを崩し、細菌の繁殖により感染症を起している可能性もあります。事実、甲殻類はこれらの菌により様々な病気を起す事が知られており、鰓着生菌・ ビブリオ病菌など様々な病原菌が知られています。中には体表などに常在しており、水質悪化など何かしらで増殖スイッチが入り体調を崩す場合もあるようです。実際養殖業界ではこれら感染症との闘いと言っても良いほど悩みの種であり、淡水甲殻類もまた同じく問題視されています。又、甲殻類の中にはバクテリアと共存していると考えられている種がいます。アリがアブラムシを守る代わりに蜜をいただくような共存もあるそうです。

●購入した添加剤を使用した際、次の日には全ての魚が白点病にかかった経験が何度かあります。これら添加剤は瓶詰めされているため、無酸素域で生存し、時間と共に変化していきます。その場合時として悪玉として活躍する場合があるようです。ご使用になる際はロットの新しい新鮮な物を使用された方が良いでしょう。明らかに古いと思われるものは使用を避けた方が無難です。

●鯉の池を作る際カニガラが使用される場合があります。これはカニガラに含まれるキチン質をエサとして増える放線菌の増殖を狙う為です。これら放線菌が悪玉と言われる菌類を食いつくし、こなれた良い水が出来上がります。

魚類ではすでに木の実(ヤシャブシ)や葉(緑茶)などを利用した方法もあり良い結果がでている場合もあるようです。『このままでは全滅しかねない・・・』そういう場合は試してみる価値があるかもしれません。実際にされる場合は自己責任でお願い致します。


『水作りにおいての飼育数』
死んで行く原因の一つに水作りの未完成も挙げられます。
水作りにおいて、水量に対しての飼育数も考えなければいけません。例えば、90cm水槽にて数十匹程度の飼育の場合、良いと言われる水作り・水質維持が難しく感じます。要するに、水量に対して飼育数が少なすぎると水の出来上がり方や維持のバランスに差異が生じます。もちろん、飼育数に関係なくうまく回る場合もありますが、飼育数が少ない内は少ないなりの水量でされたほうが水の出来上がり方が早いのは確かです。水質安定の為にある程度水を汚しながら水作りをする訳ですが、これが少なすぎると安定に時間を要し、生体も本調子を発揮できずにじわじわストレスを与え、エサ食いが悪くなり繁殖もうまく出来ない状態が続きます。逆に多すぎると急激な水質変化が起こり決して良いとは言えないでしょう。
このバランスの取り具合が水質安定のカギを握ります。水量が少なすぎる場合もまた水質維持が難しく、水換え頻度など考慮しなければいけません。エサを入れても寄り付かず、少しずつ死んで行き、いつの間にかエビを買い足す日々が流れている・・・このようにお悩みの方は、もう一度この水作りを見直し、水量に合わせた飼育数を考えた方が良いかもしれません。
調子の良し悪しの見極めは①エサ食い状態 ②じっとしてあまり動かない等が挙げられます。特に“エサ食い”にはもろ影響を及ぼします。エビは常に何かしら食べ続けながら行動しています。それらの行動に陰りが見えるようであれば水質の安定が図られていない事も視野に入れるべきでしょう。45cm水槽でも最低20匹以上、余裕があればもう数十匹足して飼育されてみるのも手かもしれません。
一概に数を増やせば良いと言う訳ではありませんが、飼育数の少なさが原因である方も多く見受けられます。